主要評価項目2年次フォローアップデータ2
2年のフォローアップデータにおいても、主要評価項目である全死亡、脳卒中、再入院の複合イベント発現率はSAVR群と比較してTAVI群で有意に低い結果を示しました。
主要評価項目

M.B.Leon et al:J Am Coll Cardiol77(9) :1149 -1161, 2021
TAVIには、4通りのアプローチ方法があります。太ももの付け根の血管から挿入する「経大腿アプローチ」、肋骨の間を小さく切開し、心臓の先端(心尖部)から挿入する「経心尖アプローチ」、胸骨上部を小さく切開し、上行大動脈から挿入する「経大動脈アプローチ」、鎖骨下動脈から挿入する「経鎖骨下動脈アプローチ」があります。
患者さんの状態に最適な方法を弁膜症チームの医師が選択します。いずれのアプローチにおいても少ない身体的負担で治療が可能です。
*ASに対する治療方針は個々の患者さんの容態または施設によって異なります。
本品は、経皮的心臓弁留置に用いるバルーン拡張型人工心臓弁(ウシ心のう膜弁)システムであり、以下の患者に使用することを目的とする。
TAVIの臨床成績については、様々な国や地域において大規模な臨床研究がなされており、有効性、安全性、生活の質などにおいて、長期的にも良好な結果が得られています。
また、発売からデバイスが改良がおこなわれています。
製品名 |
![]() SAPIEN (本邦未承認) |
![]() SAPIEN XT 販売名:サピエンXT 承認番号:22500BZX00270000 承認整理済み |
![]() SAPIEN 3 販売名:エドワーズ サピエン3 承認番号:22800BZX00094000 |
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試験名 | PARTNER Trial | PARTNER II Trial | PARTNER II Trial S3 Cohort | PARTNER3 Trial |
目的 | 手術High risk患者におけるTAVIのSAVRに対する非劣性、および手術不適応患者における保存的治療に対する優越性を検証する | 手術High Risk/Intermediate Risk患者におけるTAVIのSAVRに対する非劣性、および手術不適応患者におけるSAPIEN XTのSAPIENに対する非劣性を検証する | 手術High Risk/手術適応外患者におけるサピエン3のSAPIENに対する非劣性および手術Intermediate Risk患者におけるTAVIのSAVRに対する非劣性を検証する | 手術Low Risk患者におけるTAVIのSAVRに対する非劣性を検証する |
外科手術低リスクの重症AS患者において、TAVIのSAVRに対する非劣性を検証するために行われた臨床試験です。日本の3施設を含む、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの計71施設において、TAVIまたはSAVRを施行された患者1,000例が対象とされました。
MJ Mack et al: N Engl J Med380 (18): 1695-1705,2019
外科手術高リスク患者を対象としたPARTNER1A、中等度リスク患者を対象としたPARTNER2Aと比較し、PARTNER3試験では年齢が若く、冠動脈疾患(CAD)の合併および術前ペースメーカ留置率が少なく、QOLの高い患者が登録されました。
Smith CR, et al. N Engl J Med. 2011;364:2187-98., Leon MB, et al, N Engl J Med. 2016;374:1609-20.,
Mack MJ, et al. N Engl J Med. 2019;380:1695-1705より作成
1年後の全死亡、脳卒中または再入院*の複合イベントの発生率は、TAVI群で8.5%であったのに対しSAVR群では15.1%であり、SAVRに対するTAVIの優越性が示されました(優越性P = 0.0016、Z検定)。
*治験弁または手技に関連した入院、及び心不全による入院
*非劣性検定:両群の差(TAVI群-SAVR群)の両側95%信頼区間上限値は-2.52%であり,非劣性マージン6.0%を下回ったことから,TAVI群のSAVR群に対する非劣性が示された。
エドワーズライフサイエンス株式会社 承認時評価資料
TAVI群では術後30日における障害を伴う脳卒中が0%でした。また新規の心房細動、生命を脅かす出血はSAVRと比較して少ない結果でした。中等度以上の弁周囲逆流、新規ペースメーカ留置率においてはSAVRと同等でした。
*Log-rank検定(急性腎障害のみFisherの正確性検定)
エドワーズライフサイエンス株式会社 承認時評価資料
6分間歩行試験およびKCCQスコアにおいて、TAVI群は30日後にSAVR群に比べて改善傾向を示し、1年後も同程度の改善を維持していました。
エドワーズライフサイエンス株式会社 承認時評価資料.
Mack MJ, et al. N Engl J Med. 2019;380:1695-1705.
2年のフォローアップデータにおいても、主要評価項目である全死亡、脳卒中、再入院の複合イベント発現率はSAVR群と比較してTAVI群で有意に低い結果を示しました。
M.B.Leon et al:J Am Coll Cardiol77(9) :1149 -1161, 2021
2013年10月から2016年7月までにTAVIを施行され、14施設からなるOCEAN-TAVI registryに登録された1,613例を対象に日本でのReal WorldにおけるTAVI1年後の全死亡率、TF群/非TF群別の死亡率などを検討した臨床成績です。
全死亡率は、30日で1.7%、1年後で11.3%でした。また、心血管死亡率は、30日で1.4%、1年後で4.5%でした。TF群の死亡率は、30日後で1.6%、1年後については9.2%であり、非TF群に比べて有意に低値でした。
Yamamoto M, et al. Cardiovasc Revasc Med 2018. pii: S1553-8389 30569-4.
OCEAN-TAVI registryはエドワーズライフサイエンス株式会社から資金提供を受けている
AR:大動脈弁閉鎖不全症
Yamamoto M, et al. Cardiovasc Revasc Med 2018. pii: S1553-8389 30569-4.
OCEAN-TAVI registryはエドワーズライフサイエンス株式会社から資金提供を受けている
UK TAVIレジストリ研究では、91%の患者はTAVI施行後5~10年後にTAVI弁の構造的弁劣化(SVD)を認めませんでした4。
Blackman DJ, et al. J Am Coll Cardiol 2019;73:537-45.
2017年に発表された耐久性基準に基づき、TAVI弁のSVDを評価した試験では、追跡期間8年後に平均圧較差ならびに有効弁口面積とも変化はありませんでした5。
経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)を施行した大動脈弁狭窄症(AS)患者の追跡期間10年間における人工弁構造的弁劣化(SVD)/生体弁機能不全(BVF)発生率を評価すること。
2005~2009年にASのため、または外科的大動脈弁置換術が不成功に終わり、本レジストリーに連続して登録されたTAVI施行患者235例
SVDは欧州経皮的冠動脈インターベンション学会の人工弁の構造的劣化および機能不全の標準的定義に関するコンセンサスステートメントに従い、定義した。血行動態上の中等度SVDを平均圧較差20~<40mmHg、ベースラインからの平均圧較差の変化量10~<20mmHg、または中等度の人工弁逆流の新規発生あるいはベースラインに比べた悪化と定義し、血行動態上の重度SVDを平均圧較差≥40mmHg、ベースラインからの平均圧較差の変化量≥20mmHg、または重度の人工弁逆流の新規発生あるいはベースラインに比べた悪化と定義した。BVFは大動脈弁置換術後の再介入および血行動態上の重度SVDと定義した。
評価項目:TAVI施行10年後のSVD/BVF発生率、QOLなど
TAVI施行時の平均年齢は82.4 ± 7.9歳で、全例で手術リスクが高いと判定された。10年間の累積SVD/BVF発生率は6.5%であり(図)、10年後に生存していた患者は19例であった。日常生活動作(ADL: Katz index [入浴、更衣、トイレの使用、移動、排尿・排便、食事の6領域]にて評価])および介助なしの歩行で測定したQOLに関しては、43.8%がADLの6/6(6/6:自立度が高い、0/6:自立度が非常に低い)であり、62.5%で介助なしの歩行が可能であった。また、10年の観察期間中、再介入を必要とした重度SVDの患者は2例のみであった。
Sathananthan J, et al. Catheter Cardiovasc Interv. 2020;1–7
初期世代のTAVI弁を使用したハイリスク患者の10年後のSVD/BVF発生率は低かった。本研究はTAVI弁の耐久性に関する知見を提供している。
弁周囲逆流を含む重症人工弁機能不全に対する治療オプションとして、これまでは外科的再手術が唯一の治療法でしたが、近年カテーテル治療のオプション(TAV in SAV)が登場しました7。
弁膜症治療のガイドラインでは、”手術リスクの高い症例で、有症候性の重症大動脈弁位生体弁狭窄または重症大動脈弁位生体弁経弁逆流に対するカテーテル的Valve-in-Valve術”が推奨クラスIIaと記載されています。
これにより、今後、生体弁選択の時期がより若年化する可能性もあります7。また将来のTAV in SAVの可能性をふまえて、初回開胸手術時における弁の選択(サイズや種類)が重要になってくると考えられます。
*TAV in SAVは本邦では2018年7月より保険適用になりました。
*サピエン3は2020年1月9日にTAV in SAVの適応の承認を取得しました。大動脈弁位に留置され機能不全に陥った外科的生体弁が対象です(外巻の外科的生体弁は対象外となります)。
*対象アプローチにはTF、TA、TAo、TScがあります。
エドワーズライフサイエンス株式会社 | 承認番号 |
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カーペンターエドワーズ生体人工心臓弁 | (52B輸)第0092号† |
カーペンターエドワーズスープラアニュラー生体弁 | 15900BZY00915000* |
カーペンターエドワーズ牛心のう膜生体弁 | 16000BZY00147000* |
カーペンターエドワーズ牛心のう膜生体弁マグナ | 22000BZX00724000* |
カーペンターエドワーズ牛心のう膜生体弁マグナEASE ThermaFix Process | 22300BZX00320000 |
カーペンターエドワーズPERIMOUNT牛心のう膜生体弁ThermaFix Process | 22600BZX00413000 |
インスピリスRESILIA大動脈弁 | 22900BZX00053000 |
日本メドトロニック株式会社 | 承認番号 |
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ハンコックⅡ生体弁 | 20200BZY01142000* |
モザイク生体弁 | 21100BZY00508000 |
アボットメディカルジャパン合同会社 | 承認番号 |
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SJMエピック生体弁(エピック) SJMエピック生体弁(エピックスープラ) |
22300BZX00200000 |
*外巻弁は適応外
†バクスター株式会社により承認整理済み、*承認整理済み
エドワーズライフサイエンス株式会社 | 承認番号 |
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エドワーズプリマプラスステントレス生体弁 | 21600BZY00653000* |
日本メドトロニック株式会社 | 承認番号 |
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フリースタイル生体弁 | 20900BZY00908000 |
リヴァノヴァ株式会社 | 承認番号 |
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Soloステントレス生体弁 | 22700BZI00031000 |
*承認整理済み
References:
1. Smith CR, et al. N Engl J Med. 2011;364:2187-98., Leon MB, et al, N Engl J Med. 2016;374:1609-20.,
Mack MJ, et al. N Engl J Med. 2019;380:1695-1705
2. M.B.Leon et al:J Am Coll Cardiol77(9) :1149 -1161, 2021
3. Yamamoto M, et al. Cardiovasc Revasc Med 2018. pii: S1553-8389 30569-4. OCEAN-TAVI registryはエドワーズライフサイエンス株式会社から資金提供を受けている
4. Blackman DJ, et al. J Am Coll Cardiol 2019;73:537-45.
5. Eltchaninoff H, et al. Euro Interv 2018;14:e264-71.
6. Sathananthan J, et al. Catheter Cardiovasc Interv. 2020;1–7
7. 日本循環器学会/ 日本胸部外科学会/ 日本血管外科学会/ 日本心臓血管外科学会合同ガイドライン. 2020 年改訂版弁膜症治療のガイドライン.
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/05/JCS2020_Izumi_Eishi_0420.pdf (2020年6月閲覧)